育成就労制度で転籍リスクを下げる7つの実務ポイント

 

育成就労制度で転籍リスクを下げるには、転籍の要件だけを見るのではなく、受け入れ体制を整える必要があります。企業側では、職務内容、教育体制、相談窓口、生活支援、評価制度、監理支援機関との連携、問題発生時の対応フローを整え、外国人材が働き続けやすい職場を作ることが欠かせません。

なお、転籍に関する制度上の要件は施行前のため、最新の公式情報を確認する必要があります。この記事では、制度上の要件の詳細ではなく、企業が受け入れ体制として準備できる実務対応に絞って説明します。

特定技能制度の登録支援機関を選ぶ記事では、義務的支援や費用、委託範囲が中心になります。

既存記事「登録支援機関とは?特定技能の専門家が図解で徹底解説」では、義務的支援10項目や費用相場を解説していますので、こちらの記事もぜひ参考にしてください。

本記事ではその論点には踏み込まず、育成就労制度で転籍リスクを下げるために、企業側が先に整えるべき職場・教育・相談体制を扱います。

育成就労の転籍は2類型|本人意向とやむを得ない事情の比較表

育成就労制度の転籍は、大きく「やむを得ない事情による転籍」と「本人意向による転籍」の2類型で整理します。企業は転籍を妨げるのではなく、申出を受けたときに事実確認と必要な連携を行える体制を整えることが重要です。

類型主な起点企業が最初に行うこと
やむを得ない事情人権侵害、重大な契約違反、事業継続困難など、就労継続が難しい事情安全確保、事実確認、相談先・監理支援機関等との連携
本人意向一定の要件を満たした本人からの申出申出を妨げず、要件・同一業務区分・転籍先・手続を確認

具体的な該当性や手続は、最新の法令、分野別運用方針、運用要領および個別事情によって確認してください。

本人意向による転籍の要件|制限期間・技能・日本語・転籍先

本人意向による転籍では、次の項目を一つずつ確認します。制度開始前は情報更新が続くため、期間や水準を固定値だけで判断しないことが重要です。

  • 同じ育成就労実施者の下で、分野ごとに定められる転籍制限期間を満たしているか
  • 転籍先でも同一の業務区分に従事するか
  • 技能および日本語能力について、業務区分・分野で求められる水準を満たしているか
  • 受入れ可能な転籍先と、新しい育成就労計画の認定手続を確認できるか
  • 本人、企業、監理支援機関等の連絡・調整記録を残せるか

要件の確認は、出入国在留管理庁のQ&Aと外国人技能実習機構の運用要領を基準にします。

やむを得ない事情に該当し得るケース

「やむを得ない事情」は、本人がその職場で育成就労を続けることが難しい事情を個別に確認します。次は確認対象となり得る例であり、掲載しただけで自動的に該当するものではありません。

  • 暴行、脅迫、ハラスメントなど人権侵害が疑われる
  • 賃金不払い、労働条件の重大な相違など契約・法令上の問題がある
  • 事業の休廃止などにより育成就労を継続できない
  • 安全や健康を守れず、是正しても就労継続が困難である

申出があった場合は、本人の安全と意思確認を優先し、記録を残したうえで監理支援機関や関係機関へ連携します。

転籍申出から新しい育成就労計画認定までの流れ

転籍の申出から転籍先での育成就労開始まで、企業側では次の順に対応します。具体的な提出先・様式・期限は最新の運用要領で確認してください。

  1. 本人からの申出を受け、通訳を含む相談環境を確保する
  2. 転籍理由、労働条件、勤務実態、相談履歴などの事実を確認する
  3. 緊急の安全確保や労務是正が必要な場合は先に対応する
  4. 監理支援機関等と連携し、転籍要件と支援方法を確認する
  5. 転籍先候補、同一業務区分、受入れ体制を確認する
  6. 転籍先による新しい育成就労計画の認定手続を進める
  7. 引継ぎ資料と対応記録を保管する

企業がしてはいけない転籍妨害と早期是正

企業は本人の相談や転籍申出を理由に、不利益な扱いや申出の妨害を行わないことが前提です。問題が確認された場合は、転籍可否の議論より先に安全確保と是正を行います。

  • 旅券・在留カード・本人書類を取り上げない
  • 違約金や損害賠償を示して申出を断念させない
  • 相談したことを理由に配置・待遇で不利益を与えない
  • 本人の理解できる言語や方法で説明する
  • 相談内容、事実確認、是正内容、連携先を記録する

転籍リスクを下げる7つの定着施策

育成就労制度では、やむを得ない事情のほか、一定の要件の下で本人の意向による転籍も認める制度設計とされています。

そのため、企業が考えるべきなのは、転籍を制度的に抑え込む発想ではありません。外国人材が転籍を考える前に、職務内容のズレ、職場での不安、生活面の困りごと、将来への不安を拾える体制を作る必要があります。
転籍リスクを高める要因は次のとおりです。育成就労制度で監理支援機関を選ぶ場合は、制度開始前の申請対応、育成就労計画への関与、配属後の育成支援、転籍リスクを下げる受け入れ体制まで確認する必要があります。

① 職務内容を採用前に具体化する

最初に整えるべきなのは、職務内容です。

外国人材に任せる仕事が曖昧なままだと、採用時の説明と配属後の実態にズレが出やすくなります。そのズレが、不満やミスマッチの原因になります。

採用前に整理したい項目は次のとおりです。

  • ・実際に担当する業務
  • ・1日の仕事の流れ
  • ・必要な技能や経験
  • ・教育期間の目安
  • ・できるようになってほしいこと
  • ・やってはいけない作業や注意点

② 教育担当と相談窓口を決める

配属後に誰が教えるのか、誰に相談すればよいのかが曖昧だと、外国人材は不安を抱えやすくなります。
教育担当と相談窓口は、事前に分けて決めておきましょう。

役割決めること
教育担当業務を教える人、進捗を見る人
現場責任者配属先で困りごとを受ける人
生活相談窓口生活面の相談を受ける人
監理支援機関連絡窓口支援機関と情報共有する人

③ 日本語での業務指示の伝え方を整える

日本語能力だけに頼らず、企業側の伝え方も整える必要があります。
有効な工夫は次のとおりです。
・作業手順を写真や図で示す
・チェックリストを使う
・専門用語を言い換える
・指示内容を復唱してもらう
・分からないときに質問してよいと明示する
・緊急時の連絡先を見える場所に置く

④ 生活面の支援範囲を明確にする

職場での定着には、生活面の安定も関わります。

住居寮の有無、契約、初期費用、生活ルール
通勤交通手段、通勤時間、費用
行政手続き住民登録、保険、税金などの支援範囲
医療病院に行くときの相談先
緊急時夜間・休日の連絡先

 

生活面の支援は、企業がすべて対応するとは限りません。

ただし、特定技能の義務的支援項目がわかりやすく参考になりますが、育成就労制度で求められる育成・支援体制に照らして、監理支援機関に相談する範囲と企業側で対応する範囲を分けておきましょう。

⑤ 評価・昇給・キャリアを見える化する

外国人材が長く働くためには、仕事の見通しが必要です。
何ができるようになれば評価されるのか、どのように昇給や担当業務の拡大につながるのかが分からないと、将来への不安につながります。育成就労(現:技能実習)から長く日本で働き続けるためには、育成就労(現:技能実習)→特定技能1号→特定技能2号(介護の場合は介護福祉士)という流れが基本となります。
同じ職場で特定技能として継続して働けるのか、将来的にどのような役割や収入の変化があるのかといったキャリアの見通しを明確に提示することが重要です。
育成就労から特定技能に移行については、既存記事 「【徹底解説】育成就労から特定技能に移行する条件とは?新制度の全容と企業が備えるべき定着戦略」 について紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

企業側で整理したい項目は次のとおりです。
・評価基準
・技能の習得ステップ
・昇給の考え方
・担当業務が広がる条件
・面談の頻度
・本人に伝えるタイミング

⑥ 監理支援機関と定例確認を行う

転籍リスクを下げるには、問題が大きくなる前に兆候を拾う必要があります。

定例確認では、次の項目を見ておきます。

業務理解仕事の進捗、困っている作業
職場関係仕事の進捗、困っている作業
生活面住居、通勤、健康、行政手続き
不満条件、業務、生活面の違和感
改善策企業側で対応すべきこと

 

監理支援機関に面談を任せるだけでは不十分です。企業側も、面談の結果を受けて職場改善につなげましょう。

⑦ 問題発生時の対応フローを決める

問題が起きたときに誰が対応するか決まっていないと、対応が遅れます

問題一次対応連携先
業務上の不明点教育担当現場責任者
職場内の不満現場責任者人事・監理支援機関
生活面の相談生活相談窓口監理支援機関
体調不良企業の窓口医療機関・監理支援機関
条件面の不満人事監理支援機関

対応フローは、作成して終わりではありません。外国人材本人、現場責任者、教育担当、監理支援機関の全員が内容を把握している状態にしておきましょう。

企業・監理支援機関・本人の役割分担表

主体主な役割残す記録
企業労働条件・職務内容の一致、安全確保、相談対応、職場改善雇用条件、面談、是正、教育・評価記録
監理支援機関監理、相談、企業との連絡調整、必要な支援監査、相談、報告、連絡調整記録
本人困りごと・希望の申出、事実確認への協力申出内容、確認した説明、希望

役割分担を決めても、雇用管理や職場改善に関する企業の責任がなくなるわけではありません。

受入れ前/配属後30日/四半期のチェックリスト

タイミング確認すること主な証跡
受入れ前職務内容、労働条件、教育担当、相談窓口、生活支援求人票、雇用条件書、役割表
配属後30日説明との相違、業務理解、生活上の困りごと、相談経路本人面談、現場確認、是正記録
四半期技能・日本語の育成、評価・待遇、相談傾向、監理支援機関との連携育成記録、評価、面談・報告書

異常が見つかった場合は次回確認まで待たず、安全確保、事実確認、是正、関係者への連携を行います。

よくある質問と公式情報の更新確認先

制度の要件は更新される可能性があるため、次のサイトにて最新情報も併せてご確認ください。

Q. 育成就労制度では転籍がありますか?

A. 育成就労制度では、やむを得ない事情のほか、一定の要件の下で本人の意向による転籍も認める制度設計とされています。詳細な要件は、今後の公式情報で確認してください。

Q.育成就労の転籍に関する制度上の要件はどこで確認すべきですか?

A. 転籍に関する制度上の要件の詳細は制度開始前のため、出入国在留管理庁や外国人技能実習機構の公式情報で確認してください。

この記事では、要件の詳細ではなく、企業が受け入れ体制として準備できる実務に絞って整理しています。

Q.転籍リスクを下げるには何から始めるべきですか?

A. まず、職務内容と労働条件を採用前に具体化することです。仕事内容、教育期間、評価基準、相談窓口が曖昧だと、受け入れ後にミスマッチが起きやすくなります。

Q.監理支援機関は転籍リスク対策に関われますか?

A. 関わる可能性があります。定例面談、生活相談、企業への報告、改善提案などを通じて、問題の早期把握を支援できます。

ただし、職場改善や雇用管理には、企業側の対応も必要です。特定技能の登録支援機関と同じ支援内容を前提にせず、育成就労制度での対応範囲を確認してください。

Q.受け入れ体制で特に重要なポイントは何ですか?

A. 教育担当、相談窓口、生活支援、評価制度、定例確認、問題発生時の対応フローです。制度対応だけでなく、外国人材が職場で不安を相談できる状態を作ることが大切です。

 

転籍・定着体制を相談する

  1. 育成就労制度で転籍リスクを下げるには、制度を理解するだけでは足りません。

  2. 職務内容、教育体制、相談窓口、生活支援、評価制度、監理支援機関との連携、問題発生時の対応フローを整える必要があります。
    大切なのは、転籍を制度的に抑え込む発想ではなく、外国人材が働き続けやすい職場を作ることです。ミスマッチや不満を早めに拾い、企業と監理支援機関が連携して改善できる体制を整えましょう。

  3. 自社で準備すべき体制や監理支援機関との役割分担を整理したい場合は、Stepjobに相談してください。

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