
「優秀な留学生を採用したいけれど、ビザや法的手続きが複雑で何から始めればいいかわからない…」そんなお悩みをお持ちの採用担当者の方は多いのではないでしょうか。日本国内には464,784人(2025年末現在)もの留学生が在籍しており、意欲・能力ともに高い若手人材が身近に存在しています。
本記事では、アルバイト・正社員それぞれの採用要件から具体的な手続きの流れまでわかりやすく解説します。
留学生採用の現状とデータ
日本国内で学ぶ留学生の数は、2025年末時点で464,784人にのぼります(出入国在留管理庁調べ)。 注目すべきは、卒業後の進路意識です。 留学生の多くが「日本で就職したい」と希望している傾向にあり、日本語環境で学び、日本のビジネス慣行に触れてきた人材が、国内にすでに相当数存在することがわかります。

※出入国在留管理庁の公表データを元に当社で集計
実際に就職へとつながっているケースも増えており、出入国在留管理庁の統計では、2024年において、39,766人の元留学生が就労目的の在留資格へ切り替えています。つまり、留学生採用は「将来の話」ではありません。 意欲が高く、日本語でのコミュニケーション能力を持つ若手人材が、いま現在、国内の「留学生市場」に確かに存在しているのです。 少子化による国内新卒市場の縮小が続く中、この市場に目を向けることは、採用力を高める現実的な一手といえるでしょう。
留学生採用のメリットと注意点とは?
留学生採用には、自社の経営戦略を広げる大きな可能性があります。
一方で、事前に把握しておくべき注意点も存在します。 まずメリットと注意点として挙げられるのは、大きく3点です。 それぞれ詳しく解説します。
メリット
① 優秀な若手・専門人材の確保
日本人の新卒採用市場は、少子化の影響により年々縮小傾向にあります。
留学生採用は、そうした状況を打開する新たな母集団として注目されています。日本の大学や大学院で専門教育を受けた留学生は、即戦力に近いスキルを持つケースも多く、理工系・IT・経営など特定分野での人材不足を補う手段としても有効です。
② 社内の活性化とグローバル化
異なる文化や価値観を持つ人材が加わると、日本人社員にとっても大きな刺激になります。
「当たり前」と思っていた業務フローが見直されたり、新しいアイデアが生まれたりするなど、組織の活性化につながります。また、インバウンド対応や多言語対応の場面でも、即戦力として機能する点は見逃せません。
③ 海外展開の足がかり
留学生が卒業後も自社で活躍し続けた場合、将来的には母国と日本をつなぐ「ブリッジ人材」としての役割を担う可能性があります。海外拠点の設立や現地パートナーとの交渉において、文化・言語の両面から橋渡しできる人材は、企業にとって大きな資産となるでしょう。
注意点
留学生採用はメリットとなる部分も多いですが、外国人採用における注意点も解説します。
① 法的手続きの複雑さ
ビザ申請や在留資格の変更には、専門的な知識と相応の工数が必要です。書類の不備や申請タイミングのずれが、入社日に間に合わないといったトラブルに直結します。
② コミュニケーション・文化の壁
日本語でのやり取り自体に問題がなくても、報連相の文化や、暗黙のルールといった日本特有のビジネス慣習への適応には時間がかかります。受け入れ側のフォロー体制が、定着率を左右します。
③ 採用・教育コスト
日本人採用と比べ、ビザ手続きの費用や多言語対応の研修など、追加コストが発生する場面があります。事前に予算として組み込んでおくことが重要です。
これらの注意点は、事前に把握していれば対策を講じられます。
次のセクションでは、留学生採用で最も重要な「法的要件」を詳しく解説します。
【最重要】これだけは押さえる!留学生採用の法的要件
留学生採用には、多くのメリットがあります。
しかし、「メリットがあるから」と安易に採用を進めると、企業にとって非常に深刻なリスクを招く可能性があります。 その代表例が、「不法就労助長罪」です。知らなかったでは済まされず、雇用した企業側も刑事罰の対象となり得ます。
留学生採用を適切に進めるには、まず3つの法的知識が欠かせません。
① 「在留資格(ビザ)」の種類と変更手続き
② アルバイト雇用で必須となる「資格外活動許可」
③ 企業が問われる「不法就労助長罪」のリスク
これらを正しく理解しているかどうかが、採用成功と法的トラブルの分かれ道になります。以下で、それぞれのポイントを順番に確認していきましょう。
在留資格(ビザ)とは?「留学」と「就労ビザ」の違い
まず大前提として、「留学」の在留資格のままでは正社員として働くことはできません。
留学生を正社員として採用する場合は、「留学」から就労が認められている在留資格へ変更する手続きが必要です。代表的な在留資格が「技術・人文知識・国際業務」であり、これらへ切り替えるために「在留資格変更許可申請」を行います。
この申請で最も重要となるのが、学歴・専攻内容と職務内容との関連性です。
例えば、大学で情報工学を専攻した留学生をエンジニアとして採用する場合は、関連性が認められやすい一方、文系専攻の学生を製造現場の単純作業中心の職務で採用しようとすると、不許可となるケースがあります。
在留資格の許可を得るには、専攻分野と実際の業務内容が論理的に結び付いていることを、書類上で明確に説明する必要があります。「自社の職種は関連性があるのか判断が難しい」という場合は、早い段階で専門家へ相談することをおすすめします。
「資格外活動許可」とは?(アルバイト雇用の必須条件)
次に押さえるべきなのが、アルバイト雇用に必須となる「資格外活動許可」です。
留学の在留資格は、本来「学業」を目的としたものであるため、アルバイトとして就労するには、出入国在留管理庁から資格外活動許可を受けている必要があります。
企業側には、採用前にこの許可を確認する義務があります。確認方法は、留学生が所持する在留カードの裏面を見ることです。裏面の「資格外活動許可欄」に「許可・原則週28時間以内」と記載があれば、アルバイト雇用が可能です。記載がない場合や許可期限が切れている場合は、採用できません。
また、必ず守らなければならないのが週28時間以内という就労時間の上限です。
学校の長期休業期間中に限り、週40時間以内まで緩和されます。特に注意が必要なのは、この時間が「掛け持ちの勤務先をすべて合算した時間」である点です。
自社での勤務が週20時間であっても、他社で週10時間以上働いていれば、上限超過となります。採用時に他社での就労状況を申告書などで確認しておくことが、トラブル防止につながります。
企業のリスク:「不法就労助長罪」とは?
資格外活動許可のない留学生を雇用したり、就労時間の上限を超えて働かせたりした場合、企業は「不法就労助長罪」に問われる可能性があります。不法就労助長罪に該当した場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される可能性があります。
重要なのは、「故意でなくても処罰対象となり得る」という点です。
「在留カードを確認していなかった」「掛け持ち就労を知らなかった」といった理由では、法的責任を免れることはできません。確認義務を怠った時点で、企業側の責任が問われる可能性があります。
不法就労防止について法務省が資料を出しているので、そちらも参考にしてみてください。
出典:不法就労防止にご協力ください。| 法務省
留学生採用は人材確保の有効な手段である一方、在留資格や就労時間の管理を誤ると、企業リスクは非常に大きくなります。判断に迷う場面では、「おそらく大丈夫」と自己判断せず、行政書士や外国人採用の専門機関へ早めに相談することが、企業を守る最善策といえるでしょう。
留学生を採用する2つのパターン
法的要件を理解したところで、具体的な採用プロセスを整理していきましょう。
留学生の採用方法は、大きく分けて次の2つのパターンがあります。
| 項目 | ①アルバイト採用 | ②新卒正社員採用 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 在学中の留学生 | 卒業予定・卒業後の留学生 ※大学卒または専門学校卒が技人国の対象 |
| メリット | 人柄やスキルを確認したうえで正社員登用を検討できる | 新卒として一から育成でき、組織に定着しやすい |
| デメリット | 週28時間の就労制限があり、戦力として制約がある | ビザ変更申請など採用前の準備に工数がかかる |
| 主な手続き | 資格外活動許可の確認 | 在留資格変更許可申請が必須 |
①アルバイト採用の特徴は、「まず一緒に働いてみたい」という企業に向いており、採用リスクを抑えながら関係を築ける点が特徴です。
一方②新卒正社員採用は、早期から人材育成に投資できる反面、在留資格手続きを含む計画的な準備が欠かせません。
それぞれの実務フローと注意点を、以下で順に解説します。
パターン1:アルバイトとして採用する流れと注意点
まずは、アルバイトとして留学生を採用する実務フローを確認しましょう。
ステップ1:募集・面接
求人を掲載し、候補者と面接を実施します。この時点では、日本人採用と大きな違いはありません。
ステップ2:【最重要】在留カードの確認
採用前に必ず確認すべきなのが、在留カードです。確認のポイントは2点です。
・表面:在留資格が「留学」であること、在留期限が切れていないこと
・裏面:「資格外活動許可」欄に「許可(週28時間以内)」
この条件を満たしていない場合、アルバイトとして雇用することはできません。
ステップ3:雇用契約・採用
確認が完了したら、通常の雇用契約手続きを進めます。
ステップ4:【重要】シフト管理
週28時間の上限は、掛け持ちアルバイトを含めた合計勤務時間に適用されます。
入社時に他社での勤務状況を申告書などで確認し、勤怠を週単位で管理することが実務上の有効な対策です。
なお、アルバイトから正社員への登用を検討する場合、卒業後には必ず在留資格変更許可申請が必要になります。在学中の勤務実績は評価材料にはなりますが、手続き自体が不要になるわけではありません。
パターン2:新卒(卒業後)正社員として採用する流れと注意点
続いて、新卒(卒業後)正社員として留学生を採用する実務フローを確認しましょう。
ステップ1:募集・面接
留学生は卒業時期が9月や12月になるケースもあり、日本人学生と就職活動時期が異なる場合があります。募集・選考スケジュールは柔軟に設定することが重要です。
ステップ2:内定
内定後は、速やかに在留資格変更の準備に入ります。
手続きが遅れてしまうと入社時期に間に合わない可能性がありますので注意が必要です。
ステップ3:留資格変更許可申請
卒業前から在留資格変更許可申請を行うことが可能で、審査には1〜3か月程度かかる場合があります。入社予定日から逆算し、余裕を持ったスケジュール管理が不可欠です。
審査の最大のポイントは、学歴(専攻内容)と職務内容の関連性です。
たとえば、理工系専攻者をエンジニア職で採用する場合は認められやすい一方、専攻内容と関連性の乏しい業務内容では不許可となるリスクがあります。
そのため、求人票や業務設計の段階から関連性を意識しておくことが重要です。
ステップ4:入社・オンボーディング
在留資格の許可後、入社手続きを行います。
業務面だけでなく、生活・文化面などのサポート体制を整えておくことが、定着率向上につながります。
留学生採用にかかる費用
留学生を採用する際にかかる費用は、大きく分けて次の3つに分類できます。
以下では、それぞれの費用項目について、一般的な相場感と実務上の注意点を解説します。
採用コスト(母集団形成)
留学生採用で人材紹介会社を利用する場合、最も大きなコストになるのが紹介手数料です。一般的な相場は、理論年収の20〜35%前後が目安とされています。
例えば、年収350万円で採用した場合の紹介手数料は、以下のようになります。
・20%の場合:約70万円
・30%の場合:約105万円
求人広告掲載費用
自社採用を行う場合は、求人広告費用が中心になります。
費用感は媒体によって大きく異なりますが、目安としては以下の通りです。
・外国人 / 留学生専門求人メディア:数万円〜数十万円/掲載
・般的な国内求人媒体:数十万円〜100万円超(プラン・掲載期間による)
外国人専門メディアは、応募者の母集団は限定されるものの、在留資格や日本語レベルの前提が合いやすい点がメリットです。一方、国内大手媒体は広く募集できる反面、応募対応の工数が増えやすい点に注意が必要です。
手続きコスト(在留資格関連)
留学生を正社員として採用する場合、在留資格変更許可申請が必須となります。
この申請を行政書士などの専門家に依頼する場合、費用相場は以下が目安です。
在留資格変更許可申請(就労系):10万円〜20万円前後/1名
企業で初めて留学生採用を行う場合や、職務内容と専攻の関連性説明が難しいケース
不許可リスクを極力下げたい場合には、専門家に依頼することでリスク管理につながります。なお、入管に支払う申請手数料自体は数千円程度ですが、実質的なコストは書類作成・対応工数と考えておくとよいでしょう。
教育・受け入れコスト
社内マニュアル整備・研修費用
留学生の受け入れにあたっては、以下のような間接的コストも発生します。
・社内ルール・業務マニュアルの翻訳
・多文化対応を前提とした受け入れ研修
・OJTにかかる教育担当者の工数
特に初めて外国籍社員を受け入れる場合、見落とされがちなコストです。
日本語研修費用(重要)
採用時点で日本語能力が十分でない場合、入社後の日本語研修費用が発生する可能性があります。
これは留学生採用において、長期的な投資として考える必要があるポイントです。
日本語研修の費用感は、内容や期間によって異なりますが、
・外部研修(オンライン・通学):月1〜3万円程度/1人
・社内研修、個別指導:教育担当者の工数コスト
業務指示や報連相に支障が出ると生産性にも直結するため、
「現在の日本語レベルで業務が問題なく回るか」
「入社後にどこまで伸ばす必要があるか」を採用段階で見極めることが重要です。
留学生以外の選択肢:「特定技能」などとの違い
留学生採用(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)が自社の採用ニーズに合わない場合、ほかの在留資格も選択肢として検討する必要があります。
その代表例が「特定技能」です。
特定技能は、製造業・農業・介護・外食業など、人手不足が深刻な特定産業分野に限定して就労が認められる在留資格です。いわゆる現場系・実務系の業務に従事できる点が、「技術・人文知識・国際業務」との大きな違いとなります。
特定技能1号を取得するためには、原則として
・日本語能力試験N4相当以上(またはJFT-Basic)
・分野別の技能試験
の両方に合格する必要があります。
このため、一定水準の日本語力と、分野に応じた実務スキルを持つ人材であることが、入社時点で担保されている点が特徴です。ただし、N4はあくまで「生活・簡単な業務ができるレベル」であり、職場で円滑に業務を進めるには、入社後のOJTや日本語サポートが必要となるケースも多い点には注意が必要です。
一方で、在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、
・留学生を新卒として採用するケース
・海外在住の専門人材を直接採用するケース
など、幅広い採用ルートで活用されます。
主にデスクワーク中心の職種(エンジニア、企画、営業、通訳、マーケティングなど)が対象となり、学歴や専攻と業務内容の関連性が重視されます。
どの在留資格が最適かは、任せたい業務内容・求める即戦力レベル・教育にかけられるコスト・将来的なキャリア設計によって大きく変わります。判断に迷う場合は、行政書士など外国人雇用に詳しい専門家へ相談することが、結果的にリスクとコストを抑える近道になるでしょう。
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まとめ
外国人留学生の採用を成功させるには、法的要件の確認・採用後のリスク対策・採用手法の選択が重要です。
在留資格や就労時間のルールを正しく理解し、学歴と業務内容の関連性や入社後のサポート体制を整えることで、トラブルや早期離職を防げます。
また、留学生採用だけでなく、「特定技能」など他の在留資格も視野に入れ、自社に合った方法を選ぶことが、外国人材活用の成功につながります。





